6月14日時点で日本株相場は活気を取り戻しつつある。日経平均株価は37,700円前後と高止まりし、年初来でも上昇傾向にある。アナリストのコンセンサスでは、後半にかけて約5%の上昇が予測されており、年末には3万9,600円程度に達する見込みだ 。
企業業績は底堅いがピークアウトの警戒も
日本企業の2025年業績は一部でピークアウト感が見られるものの、全体としては堅調だ。4〜6月期決算では、製造業中心に円安メリットを享受しつつ、コスト転嫁も進んでおり、利益率を維持している。ただし、グローバル景況感の鈍化や米中貿易摩擦の再燃によって、輸出関連企業を中心に売上の先行きに不透明感が漂う。ロイターの調査では6名が「業績横ばいまたは若干悪化」と予想しており、残り6名が「微増」と回答するなど、見解が拮抗している 。
円安トレンドの持続性とリスク
1ドル=155円前後で安定している円安基調は、日本の輸出企業にとって追い風である。但し、最近の米金利上昇観測やBOJの金融政策修正により、キャリートレードの巻き戻しリスクも浮上。2025年後半にかけては円高リスクにも注意が必要だ。ブラックロックは、円安による企業収益改善を評価しつつも、「円高への逆方向リスク」を指摘しており、通貨ボラティリティが収益を左右する可能性があると述べている 。
● FRB・BOJの金融政策、為替相場への影響
BOJは今年より長期金利正常化に着手し、政策金利は0.5%→0.75%への漸進的引き上げが市場で織り込まれてきた。一方、米FRBは景気持ち直しが見込まれる中、利下げに慎重な構え。米日金利差の維持が円安の支えとなるが、両国の政策スタンスが逆転した場合、円が急騰する可能性も否定できない。
海外投資家の動向:日本株に再注目
米国株やドル相場の停滞を背景に、海外マネーは日本や欧州へシフトしつつある。ウォーレン・バフェットの注目や、外国投資家によるETF投資が活発化しており、その構造は1990年代のピーク時を思わせる勢いだ 。ただし、政策リスクや為替の不透明感が漂う中、投資マネーは慎重さも併せ持つ。
リスク要因と注意点
- 米中・米欧の貿易摩擦再燃
特に自動車や半導体分野での追加関税が浮上すれば、日本輸出企業への悪影響は不可避 。 - 円高への急ブレーキ
キャリートレードの巻き戻しや政策転換が円上昇を招き、利益相殺リスクとなり得る 。 - 企業収益のピークアウト
主要企業の業績は底堅いものの、原材料費の上昇や輸出の鈍化により、増益トレンドには限界。楽観一辺倒には注意が必要 。
投資戦略:分散と段階的アロケーションを
後半の相場では、円安メリットや海外マネーの流入を活かすために、輸出関連やバリュー株が中心となるだろう。同時に、ヘッジ手段として一部で円高リスクに備える戦略も検討すべきである。具体的には、次のような分散的アプローチが有効と考える:
- 為替ヘッジ型ETFと非ヘッジ型ETFを併用(50~70% carry trade を反映)。
- 海外投資家の買いを受けやすい大型株(トヨタ、ソニー、キーエンスなど)を軸に据える。
- 下支えとなる内需系や独立系中小株にも慎重に分散投資。
- 不透明感が高まる時期にはキャッシュポジションを調整しつつ、急落時の押し目買いに備える。