1. 半導体材料業界の現状と成長背景
日本は半導体材料分野で世界的な優位性を維持しており、シリコンウェハーやフォトレジスト、CMP研磨液など14種類の主要材料で全球シェア50%超を独占しています。特にAIやEV(電気自動車)需要の拡大により、半導体製造プロセスに不可欠な高純度材料への需要が急増。2025年3月には新規上場したJXアドバンストメタルズ(株)が29億ドルの大型IPOを達成し、半導体材料分野への投資熱を再燃させました。
2. 注目企業の成長戦略と業績動向
- 信越化学工業(4063)
全球シェア1位のシリコンウェハー企業。300mmウェハーの需要回復が顕著で、2025年第2四半期以降はLTA(長期契約価格)の値上げが予測されています。AI向け高性能チップの需要増加と連動し、営業利益率30%超の高収益体質が維持されています。 - SUMCO(3436)
シリコンウェハー世界シェア2位。300mmウェハーの在庫調整が終了し、2025年後半から出荷量増加が見込まれます。また、次世代半導体材料であるSiC(炭化ケイ素)外延片の開発で、EV市場開拓を加速中です。 - 東京応化工業(4186)
EUVフォトレジストの全球シェア38%で首位。微細化技術に対応した1μm線幅フォトフィルムを開発し、HBM(高帯域幅メモリ)需要に応える戦略を推進しています。
3. 新興勢力と技術革新の最前線
- JXアドバンストメタルズ(新規上場)
台湾TSMC向けの半導体材料供給を拡大。AIチップ向け高純度金属材料の需要増を背景に、上場初日に株価5.24%上昇を記録しました。 - レゾナック(4004)
昭和電工と日立化成の統合で誕生。SiC外延片や封止材で技術優位性を確立し、2025年以降の車載半導体需要拡大を牽引しています。
4. 業界トレンドとリスク要因
- 成長ドライバー:
- AIサーバー向けHBM(高帯域幅メモリ)の生産拡大に伴い、研磨材や封止材の需要が急増。
- 日本政府の補助金(3.9兆円規模)が材料開発企業を支援。
- リスク要因:
- 円高による輸出競争力の低下(半導体材料企業の海外売上比率は平均70%超)。
- 中国企業の技術追撃(シリコンウェハー分野で中環半導体が急成長)。
5. 投資戦略:四季報分析からのポイント
- 短期:300mmシリコンウェハー在庫調整終了(2025年Q2)を契機とした信越化学・SUMCOの反騰期待。
- 中長期:EV向けSiC市場(2030年までに5倍成長予測)や、日本独自の封止技術(味の素のABFフィルム)に注目。
データ出典:東洋證券、華泰証券レポート、JXアドバンストメタルズ上場資料、業界専門メディア。最新株価データは2025年4月9日現在の東証株価を反映。